★検証★993型ポルシェの秘密 前編

最終更新日2005/10/22
「993って何でこんなに値段が落ちないの?」
ポルシェをお探しならば、きっとこう思われている方がいらっしゃるはずです。そこで今日は、なぜ993が人気なのか、今回はそれをクローズアップさせていただきます。
その理由を簡単に申しますと993型とは930ボディの最終型、つまり空冷(油冷)エンジンの最終型であるために、コアなファンが求める「昔ながらのポルシェらしさを色濃く残しつつも信頼性が高いポルシェ」となると、必然的に993型という事になってきます。私から正直に申し上げてカタチはクラシカルですが実際に走らせてみると動力性能は一級品、楽しさは最近のコストダウン・スポーツカーなどとは比べ物になりません。では何故30年近くも基本骨格を変えなかった車が今なお「素晴らしい」と賞賛されるのか?
それを説明するには少し自動車の物理学のお話をしなければなりません。その秘密は惜しみなくコストをかけて作り上げられたモノコックボディにあります。さて、ところで皆様は“ボディ剛性”と言う言葉をご存知でしょうか?
車に興味をお持ちの方ならば一度は耳にしたことがあるのではないかと思います。ボディというものはその車のキャラクターを左右する一番重要な“部品”と言えます。いくら良いサスペンションやタイヤを付けても、ボディがしっかりしていなければ何の意味もありません。例えば衝突時のキャビンを守るのも勿論ボディ剛性の賜物ですがそれは今回は置いておいて、ここで説明するボディ剛性とは、主に走行性能や快適性に恩恵をもたらすものです。解りやすく言葉を置き換えますと、“ねじれ剛性”とも言えます。四つのタイヤをサスペンションを介してボディのたった四点でそれ以外のすべての重量を支える構造であるのはどんな車も変わりません。ですがその四点に掛かった重力はやがてボディへ分散されます。当然の事ながら自動車とは走る為の機械ですから、その四点に掛かる力は常に変化します。完全な平面の道を走行中の車がブレーキを掛ければ慣性の法則によってその重量がフロントの2点に強く掛かり、コーナーリング時には回転軸から見て外側の2点へ大きく掛かる事になります。
ではブレーキングをさせながらステアリングを切ったとしたらどうなるでしょうか?今度は一点に非常に大きな力が掛かる事になります。そしてその瞬間ボディにねじれようとする力が発生します。この“ねじれ”が極端に大きい車というのは、コーナリング性能が低い・又はドライバーから見てコントロールし難い車と言えます。何故か?ねじれた物には必ずそれを戻そうとする同等の反力が発生します。これは同時に車を支えているサスペンションやタイヤにも同じことが言えます。ボディ各部へ伝わったコーナーリングフォースは、今度はその反力をサスペンションを介してタイヤへと伝えます。この時の反力の大きさが、タイヤを路面へと押し付ける力となるのです。もうお解かりかと思いますが、ボディ剛性が低いということは、反力を発生させるまで時間が掛かってしまい、タイヤのグリップ力を最大限まで引き出せない と言う事になるのです。つまりもし剛性が高ければ、ねじれに対する反力も大きいので、ステアリングを切ってから車が姿勢を作るまでの時間は非常に短く、かつタイヤを最大限グリップさせることにつながるのです。